「A級戦犯というカテゴリー分けはおかしい」という議論は説得力ゼロ!

「A級戦犯は罪の重さで A級指定されているわけではない」
これは靖国神社擁護派の人たちからよく言われることです。
それ自体は事実です。ただしそこは議論の本質ではないということを簡単に説明します。
靖国神社とは(ごく簡単に)
靖国神社は幕末から明治維新にかけて、国家のために殉死した人たちが祀られている神社です。
もともとは東京招魂社という名でした。
戊辰戦争の官軍側戦死者を祀るという意味合いで建設された神社なので、それに反旗を翻した西郷隆盛などは祀られていません。

元衆院議員の亀井静香氏を筆頭として、彼らも合祀しようという話はありますが2018年8月現在では実現していません。
国家のために亡くなった人たちを祀るという性格上、対外戦争で亡くなった方たちも祀られています。
日本が経験した一番間近の戦争である、太平洋戦争によって祀られた人たちが議論に挙がることが特に多いです。実際に終戦記念日である8月15日には普段より何十倍もの人たちが参拝に訪れます。

私も8月15日を含め、何度か参拝をしています。
靖国神社をめぐっては中国・韓国が A級戦犯が祀られていることを理由に、政治家、特に内閣のメンバーが参拝することを公に批判しています。
A級B級C級戦犯とは
それぞれの戦犯は簡単に分類すると以下のようになります。
- A級:平和に対する罪を犯した者
- B級:戦時国際法に違反する罪を犯した者
- C級:戦時、平時に拘わらず大量殺人など非人道的な罪を犯した者

A級の「平和に対する罪」とは分かりにくいですが、言ってしまえば戦時中の指導層が対象です。
開戦時に内閣総理大臣を務めていた東条英機氏の名前が頻繁に挙がります。
B級戦犯は一般的な戦犯の人たちです。
C級戦犯はいわゆる「人道に対する罪」というカテゴリーで裁かれた人たちです。
ではこれら3つの違いとはなんでしょうか?
ずばり上のリストで挙げた違いです。罪の重さではありません。
A級戦犯が憎まれるのは当然
そうです。罪の重さで A・B・C と分かれているわけではないのです。
このことから日本国内において、以下のような論調が保守派の人たちから度々なされます。
A級戦犯は B級 C級と比較し罪が重いというわけではないので、A級戦犯が祀られていることを理由に中国・韓国が反発するのはナンセンスである。
一見正論のように見えますが、実際はこの議論の方がよほどナンセンスです。
考えてもらいたいのですが、以下の2つのカテゴリーのうちどちらの方がより相手方の後世の人たちから恨まれるでしょうか。
- 戦場で実際に戦闘行為をしていた人たち
- その戦争を指導していた人たち
言うまでもなく後者の「戦争を指導していた人たち」です。
後世の人たちからすれば、戦場で戦っていた人たちなど名前はもちろんのこと顔さえも出てきません。
よって戦争の指導層である A級戦犯の人たちが批判の的にされることはいたって当然でしょう。
A・B・C級の違いを中国・韓国の人たちに説明するのは結構なことですが、この議論は基本的にここで終わるような気がします。
靖国問題の本質は外交問題
結論から言うと、靖国問題は単なる外交上のカードです。
「靖国神社に参拝しないで欲しい」という要望のようなものが中韓からなされますが、これは、「日本よ、俺たちの言うことを聞け!」という外交圧力にすぎません。
さらに中国・韓国が自国内で散々靖国の話題を煽ってしまったので、結果として下(国民)からくる圧力に対応するために、更にこの問題を肥大化させているという側面があります。
「A級戦犯を分祀さえすれば中国は日本の政治家の靖国参拝に対して文句を言わない」というような議論がありますが、単なる外交カードなので批判の対象が変わるだけでしょう。
どのみち分祀ということは神道という宗教の性格上できないという結論が出ています。
これは外交問題であるため、永久に解決しないのではないでしょうか。