天才ハッカーアイスマンの正体とマックス・バトラーの素顔 – 終章

アイスマン裁判

裁判には友人も家族も来てくれず、交際していた彼女のチャリティー自身もマックスの釈放を待つつもりはないと伝えており、彼にとっては非常に寂しいものだったと想像します。

ただ裁判に関心を抱く複数のメディアリポーターは来ていたということです。

BINDアタックの際には数多くの友人や関係者がマックスのサポートにまわっていたことを考えると、彼にとってこの裁判は精神的なダメージも相当あったと察します。

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ここからが重要なんですが、マックスはいったいどれくらいの金額を一連の事件で得たのでしょうか。

仰天ニュースでは「100億円稼いだ」、「13年の懲役刑で罰金25億円」などと放送していたので「13年間オリの中にいるだけで75億円の利益か・・・」などと思った視聴者もいたと思います。

これはかなりミスリーディングです。

正しく言うとアメリカの司法制度では、被告人がいくら稼いだかではなく被害者がどれほどの不利益を受けたのかという視点で量刑が言い渡されます。

正確にいうと8,640万ドル (約101億円) の被害額に対して2,750万ドル (約32億円) の賠償です。

補足して言いますと、番組内では「2750万ドル (当時約25億円)」と放送していましたが、それで計算すると1ドル約91円となり、逮捕された2007年の平均為替レートである117円と比べ大幅な差異があります。

いったいどのようなことをしたら、そこまで計算が狂うのか番組を制作した人に聞いてみたいです。

マックス自身は100万ドル (約1億1700万円) も稼いでいないと話しており、逮捕された際口座には8万ドル (約936万円) ほどしかなかったということです。

どこかに隠し持っている?

その可能性は否定はしません。

ただし当時マックスに対する量刑は被害規模から計算すると懲役30年から終身刑と言われていましたが、フタを開けてみれば13年です。

これはマックスが捜査に非常に協力的だったということと、彼の物腰の柔らかさや、その人間性に捜査関係者が魅了されてのことです。

実際に American Greed でのインタビューを見た私の彼に対する印象は気の優しい誠実な人といったところです。

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ルーク・デンボスキー

事件を担当した検事であるルーク・デンボスキーは裁判前に被告席に行き、握手を求めていてマックスはそれを笑顔でうなずき応じています。

よほど彼の人間性に魅力を感じたのでしょう。

ですので彼が秘密口座を持っているのような話は個人的には現実的ではないと思っています。

付け加えて言うと、捜査関係者の話としてアラゴンは少なくとも100万ドル (約1億1700万円) は稼いだと言いますが、マックスは American Greed のインタビューで「稼ぎの半分はもらえると思っていたけど、そういうことは一度もなかった」と述べており1億1700万円ほどは稼いだアラゴンの半分も得られていないのであれば、事件の規模に比べて利益はかなり少なかったと思われます。

クリス・アラゴンのその後

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クリス・アラゴン

アラゴンには懲役25年が言い渡されました。

このとき52歳という年齢を考えると絶望的ですね。

ちなみに妻からは離婚と2人の子どもの親権を求める申請をされ、不倫をしていた相手の女性からは隠し子の養育費を請求されています。

まあ自業自得といったところでしょうか。

マックス・バトラーのその後

刑務所に収監されたマックスは刑期の短縮を願いレポートを書き上げました。

Why the USA Needs Max

なぜアメリカ合衆国はマックスが必要か

その中で彼は「私は中国軍のネットワークや軍事産業にも侵入できる」、「私はアルカイーダをハッキングできる」などとアピールをしたらしいです。

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キース・ムラスキー

そう簡単にそのオファーに飛びつく政府関係者もいなかったようですが、判決から1ヵ月後にかつての宿敵マスタースプリンターことキース・ムラスキー捜査官は NCFTA にてマックスにセキュリティ関係者などを集めた前で講演をしてもらうための手配をしたということです。

いまさら遅いですが、マックスも自身の行為に対しては相当な自責の念があるようです。

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過ちを後悔するマックス

I would say “Go to school.Get an advanced degree, and stay out of trouble”.

I wish I had that advice back then but, uh…


「学校へ行きなさい。上級学位 (修士・博士) を取得して、トラブルに巻き込まれないようにしなさい」。

そのようなアドバイスを当時受けれたらよかったと思いますが・・・

素晴らしいスキルを持っているのに本当にもったいないですね。

マックス・バトラー最後の声明文

世界仰天ニュースの放送内容の事実誤認を指摘するために書いたはずのネタが、気付けば事件全体の概要を述べることになってしまいました。

楽しんで読んでもらえたのであれば幸いです。

日本のメディアが海外の報道をするときに話しをねじ曲げることはよくありますが、ここまで事実と異なる内容を放送することもめずらしいと思います。

番組の制作に関わった仰天ニュースのスタッフの方たちは事実を誤認したというより、意図的に物語を捏造したと考えています。

今後この番組で海外の話を放送している場合は、話が事実に基づいていない単なるフィクションだと思ったほうがいいでしょう。

最後にマックスが弁護士を通じ、法廷での答弁後に公表した声明を記載して締めくくりたいと思います。

自身のことを三人称で呼んでいるところが考えさせられます。

Max Vision, known in this case as Max Butler, pled guilty today as a first step toward getting this sad chapter of his life behind him.

It is unfortunate that his life circumstances in 2005 led him to participate in this criminal conduct, and he very much regrets doing so…

Max has always preferred using his extraordinary computer skills – his computer vision – for the good of society and the cyber world, and he hopes that he will be given the opportunity in the future to once again don the white hat.


この事件でマックス・バトラーとして知られているマックス・ビジョンは彼の人生のこの悲しい章を過去のものとするための第一歩として本日罪状を認めました。

2005年における状況が彼をこの犯罪行為に加わることに導いたことは不幸であり、彼はそうしたことをとても悔やんでいます・・・。

マックスは常に自身のコンピュータに対する洞察力など並外れたコンピュータスキルを犯罪ではなく社会とサイバー世界のために活用することを好んでいました。そして彼は将来もう一度ホワイトハットを身に着ける機会が与えられることを願っています。

主要参考文献一覧

他にも色々漁っていますが、内容が似通っているものが多々あり、それらは省いています。

<アイスマン関連書籍>


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