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共産主義とは?現代の社会情勢とともに簡単に説明してみる

2018.06.022017.11.18その他・雑記

共産主義国家が誕生した

基礎編からの続きです。

ブラック過ぎる企業体質にうんざりしていた世界中の労働者たちが共産主義を熱烈に支持しました。そしてついにロシア帝国で革命が起き、周囲の国も巻き込んだソビエト連邦が誕生しました。

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ロシア革命

ソビエトそのものは15の共和国の連合体です。ソビエトとはロシア語で「評議会」という意味です。ロシアと同一扱いされることがありますが、それはソビエト連邦の中心的存在がロシア共和国だったからです。

ちなみに共和国とは単純に言うと、「王様がいない国」のことです。

日本は天皇家が存在するので共和国ではありません。

共産主義のシンボル

共産主義のシンボルカラーは赤です。

フランス革命時の戒厳を示す旗の色だったからというのが起源として言われます。

諸説ありますが、革命のシンボルカラーとしてはおそらくこの時期に定着したのでしょう。それにちなみソビエト連邦の国旗は赤色です。

日本共産党が発行する機関紙も「しんぶん赤旗」です。

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鎌と槌

共産主義のシンボルである鎌と槌は、鎌を扱う農民と槌を扱う(工場などで働く)労働者の団結を表しています。

ブラック企業の社長が恐怖におののいた

革命が実際に起きた際に一番不幸を被るのは、ブラック企業経営でボロ儲けをしている経営者たちです。共産主義を語る上で「資本家」と呼ばれる人たちです。

自身が築いた財産が没収されてしまうので、共産主義とは恐怖そのものでしょう。

ただし財産没収だけで済めばまだマトモなほうです。実際は革命の名の下に世界中で数多くの資本家が殺されました。労働者の目の敵にされていたのですね。

それで理想郷が実現すればまだいいものの、実際は共産主義を語ったトンデモな国家が数多く誕生してしまいました。

共産主義という名の悪夢

ロシア革命で名目上は労働者が管理する国家が建設されたわけですが、実際のところは単なる横暴な独裁国家でした。

人間という生き物は完璧ではありません。

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ジョン・アクトン

ジョン・アクトン というイギリスの思想家が語った言葉が有名です。

Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.

権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する。

労働者の代表として権力の頂点に立ったとたん、その権力者たちは横暴に振舞うようになってしまったのです。

いくらか例を挙げていきます。

ポル・ポト

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ポル・ポト

カンボジアを恐怖のどん底に陥れた政治家です。

「労働者を解放せよ」という掛け声は立派ですが、彼らを支配してきた資本家たち、もしくはそう見なされた人たちを徹底的に弾圧しました。中にはメガネをかけているというだけで上流階級のレッテルを貼られて処刑された人もいるほどです。

利益を独り占めにしている経営者を打倒して、労働者の間で富を平等に分配するという考えが共産主義にはあります。

ポル・ポトはこともあろうに、文明的なものを全て破壊して原始的な社会体制へと国家全体を方向転換したのです。

「原始時代には社会階級などは存在せず、皆平等に生活していたはずだ」という考えが根底にあったのでしょう。これを「原始共産制」と言います。

本末転倒ですね。

共産主義の平等という理念は人々が幸福になるためであって、平等そのものが目的ではありません。

ポル・ポト政権下で天文学的な数の人々が亡くなることになります。

北朝鮮

北朝鮮は社会主義を標ぼうする国家です。

社会主義とは共産主義の前段階と思っておけばいいでしょう。同じ路線の思想です。

共産主義とはそもそも社会階級を認めていないので、王族がいない共和国が前提となります。北朝鮮の正式名称も朝鮮民主主義人民共和国です。

ただしこれはナンセンスです。金一族は誰が見ても北朝鮮の王族です。ですから共和国というのは単なる名目でしょう。

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ちなみに金正日総書記は全くといっていいほどスーツを着なかったですよね。

独裁者とはすなわち絶対的権力を保持した政治家なのでスーツくらい着ていてもよさそうですが、彼はいつも変な服装をしていました。

実はあれは作業着だったのです。つまり労働者の代表ということです。まあ、シワひとつない綺麗な作業着だったので全く説得力が無かったですが。

彼や、その息子である金正恩委員長がトップとして君臨する政党を「朝鮮労働党」と言います。そのままですね。

あさま山荘事件

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あさま山荘事件

あさま山荘事件は、かつて日本国内において共産主義革命を標榜していた連合赤軍というテロリスト集団が起こした事件です。

おそらく当事者たちは自身のことをテロリストとは思っていなかったでしょう。革命戦士とでも考えていたのではないでしょうか。

1960-70年代というのは共産主義を掲げる団体が日本国内に数多く存在していました。その中核を成すメンバーの多くは誰でも聞いたことがあるような有名大学出身の大学生などです。

その彼たち、彼女たちが理想を目指した結果がこれです。

なんとも言えないせつなさを感じますね。

ここらへんの話は中核VS革マル(上)に詳しく記述されています。

大学生や新社会人の方たちに読んでもらいたいですね。

かつての日本では、大学生同士でヤクザ顔負けの血で血を洗う抗争が繰り広げられていたのです。

その他の国々

中国も建前上は共産主義を標ぼうする国家です。

実際は疲弊した経済を活性化させるために改革開放政策を行い、資本主義に転換しました。

ただし中国を支配するのはいまだに中国共産党です。

キューバは社会主義国家です。国民の全てが公務員という形の国です。

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冷戦時にソビエト側についていたのでそれ以来アメリカと仲が悪く、両国が国交正常化を果たしたのはつい最近の出来事です。ニュースや新聞などが盛んに報道していましたね。

このように共産主義の概要と歴史的な歩みを知らないと、現代の世界の流れは理解できないのです。

マルクスは人間の煩悩を甘く見た

このようにして見るとまるで共産主義が悪魔の思想のように思えてしまいます。

ただしそれは間違いです。

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カール・マルクス

共産主義思想を体系化したマルクスが求めた社会体制と、実際に誕生した共産主義国家の社会体制の間に異常なまでの乖離が存在したのです。

マルクスが理想としたのは、「一部の権力者が富の大部分を握るのを阻止し、労働者間で平等に分配する社会」です。

真の意味で共産主義を達成した国家は結局誕生しませんでした。

「富を平等に分配」とは聞こえはいいですが、言い方を変えると「仕事ができても、できなくても支給される給料は同じ」ということです。それではモチベーションが上がりませんね。

実際に多くの共産主義国家では、国民の働く意欲が薄れ経済は停滞しました。

「一旗揚げたい」、「金持ちになりたい」などの人間の欲望を達成することのできる資本主義の魅力が共産主義には欠けていたのです。

つまりマルクスは人間の欲望、仏教的に言うのであれば、煩悩を甘く見たのです。

マルクスの理想に最も近い国

マルクスが理想とした社会像に最も近いと言われた国が存在します。どの国だか分かりますか?

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日本です。

一億総中流と呼ばれるように、日本国民の大多数は自身のこと中流階級として捉えていました。

皆が社会の中流に属すということは、言い換えれば富が等しく分配されているということです。マルクスの理想に近いと言われれば、たしかにそうかもしれません。

絶対的存在は絶対的にコケる

マルクスが記述した共産主義の聖典とも言える書籍は「資本論」といいます。

一言で内容を説明すると、「社会における資本(お金)の立ち位置を科学的に考察する」というものです。

内容にはかなり説得力があり、ソビエト連邦が破綻した現在でも「マルクスが提唱した資本の理論は間違っていない」ということを公言する大学教授がいるほどです。

説得力があり過ぎたゆえの弊害も表面化しました。

共産主義的政策には様々な問題が生じますが、それらを批判すると「絶対的に正しい共産主義思想を批判するお前は絶対的に間違っている」と責め立てられる事象が世界各地で発生しました。

そしてそういった者に「反革命分子」というレッテルが貼られ、多くの人たちが処刑されたのです。現在でも北朝鮮では、政府に逆らった人たちを反革命分子として弾圧していますね。

「絶対」と言ってしまい、それ以外の意見が全て排除されるのは社会にとって不健全でしょう。

アメリカは冷戦でソビエト連邦に打ち勝ち(というよりソビエトが自滅)、1990年代に絶対的な存在として世界に君臨しました。

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イラク戦争

調子に乗ってしまったアメリカは自信過剰となり自らに逆らう者たちを排除しようとし、最終的にはまわりの制止を振り切りイラク戦争へと突入し見事にコケました。

完全に反面教師ですね。自らを絶対的と捉えるとロクなことがないということです。

共産主義の功罪

共産主義思想による犠牲者数は全世界で1億人を超えるとも言われています。

ただし功罪(いい面)もありました。

共産主義革命を恐れた資本主義国家の多くが労働者の不満を抑えようと数々の法律を整備し、結果として人々の待遇が改善しそれに伴い生活水準も向上したのです。

世界各国が外からの要因ではなく自発的に労働環境を良くするよう努めていれば、20世紀における共産主義による悲劇も発生していなかったかもしれません。

説明が物足りないと感じた方へ

共産主義の歴史上の歩みの概要をざっくりと説明しました。

どうでしたでしょうか。

物足りないと感じた方には『そうだったのか!現代史』をオススメします。

また『そうだったのか! 朝鮮半島』も共産主義を理解する上で参考となるでしょう。

両方とも池上彰さん著作の本ですが、とても読みやすく良書です。

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